しまのま
生活と文化とわたし

海は、島へ、いろんなものを届ける。

魚や貝などの命を育む恵みから、厄介な漂着ゴミまで。とくに後者は、航海技術の向上や、また自然に還らない素材の増加に伴って、ここ半世紀でずいぶんと増えたらしい。都会から来た人が感激するほど透明度を誇る沖永良部島の海も、お年寄りは「汚くなった」と嘆く。

そんな中、漂着ゴミを使って、本格的なDIYをしている人物がいる。

このテーブルとイス、実はすべて漂着した木材でできている。

作成者は古村英次郎さん。島出身で、2007年にUターン。

かっこいい!デルモンテのロゴとの出会い

「2021年の秋頃、浜にあったパレットにデルモンテのロゴが入っているのを見つけてさ。『これをテーブルにしたらかっこいいな』と思って、ほかにも流れてきていた柱を4等分に切って足にして作ったのよ」

DIYのきっかけを振り返る古村さん。ちなみにデルモンテとは1886年に設立した世界最大級の果物・野菜などを取り扱うグローバル企業。トマトケチャップで有名なメーカーと言えば、あぁ、あれかと思い出す人も多いだろう。

そんな、誰しもがどこかで見覚えのあるロゴを、海から流れてきたゴミの中に発見したことで、漂着ゴミを使ってテーブルを作るという構想が生まれた。

眺めの良い、古村さんの自宅の庭。

ちょうど自宅を新築した時期、庭に人を呼んで集まれるようにしたいと考えているタイミングだった。しかし、雨ざらしになることもある庭に、わざわざ新しいアウトドア家具を買って置くのもいかがなものか。そんなちょっとした葛藤があった中でのインスピレーション。

DIYに慣れていた古村さんは、難なくひとつのテーブルを仕上げた。テーブルを作れば、イスも作りたくなる。一式作れば、もう一式作りたくなる。そうして、浜で「かっこいいロゴ」があるパレットを見つけては自宅に持ち帰り、これまでに計4点のテーブルを作った。

釘も、パレットをバラすときに引き抜いて、トンカチで真っ直ぐ伸ばしてまた打ち直しているという徹底ぶり。極力、拾ったものを使って新たな家具を生み出している。

イスが倒れないように垂直に取り付けられている板は、「おそらくもともとはロープはしごの一部」という。どこかの船が大量のラダーを棄てたのか、それとも転覆したのか、バラバラになったはしごの部品が潮の流れにのって、大量に島へ流れ着いた時期があったそうだ。

だが、そもそも普段から浜へ行ってなければ、デルモンテのロゴとの出会いもないだろう。それもそのはず、浜は古村さんの家の近所にあり、今から1年半前、2021年の夏から毎日ビーチクリーンを行う場所。そのきっかけは、お母さんだという。

ビーチクリーンをしながら気になる木材を拾う古村さん

母譲りのビーチクリーン、父譲りのDIYの精神。

「母ちゃんは毎日ビーチクリーンをするようになって今年で8年目。日課だったことは知っていたけど、身体を悪くして入院するときにビーチクリーンに行けないことを理由に渋っていたから、俺が代わりにやることになったんだよね。それで自分も日課になっちゃった」

それからお母さんは無事退院し、今は親子で毎朝、同じ浜で顔を合わせている。

日課のビーチクリーンを行う古村さんとお母さん

この通り、漂着ゴミでテーブルを作ったことは間接的にお母さんの影響があったからだと言えそうだが、実はDIYについてはお父さんからの影響が強いようだ。

「子どもの頃は物がなくて、トラクターの部品が壊れたら、何かを加工して代用するとか、親父があり合わせのものを工夫して作る姿を昔から見てたんよね。その影響で俺も、手元にあるものでやってみて、それがダメならちゃんと専用のものを買おうという性格になった」

母譲りのビーチクリーン精神と、父譲りのDIY精神。そこに、庭を人が集まれる場所にしたいという動機と、デルモンテのロゴとの出会いが重なり、漂着ゴミ×DIYははじまった。

風雨に晒された木材は精鋭たち

この家具、言ってみれば「不用品のありあわせ」だが、想像以上に機能性は高い。

パレットはどれも規格が決まってるため、組み立てやすいことはもちろん、その規格が、ちょうど足を載せられる位置に板があったり、スマホやタバコを置くスペースになる。「意外と使い勝手が良い」とのことで訪問客にとっても好評らしい。

また、耐久度も抜群。もともと風雨に晒され続けた末に島まで流れ着いた木材。「傷み切っていて、これ以上朽ちることはない。精鋭揃いみたいなもの」と古村さんは笑う。

そもそも庭に置こうと考えた理由が、「雨ざらしになっても問題ない」ということだったと考えると、海上で雨ざらしに耐えてきた木材には、これ以上ない使いどころだと言えそうだ。

海の暮らしと切り離せない離島を中心にビーチクリーンなどの取り組みが増える中、さらに漂着ゴミで新しいものを生み出すことは、アップサイクル(不要な製品を環境価値の新しい材料または製品にアップグレードすること)にも通じるとても新しい試みのように感じる。

しかし、古村さんの話によれば、沖永良部島にある鉄工所も、戦時中に沖合で軍艦が座礁して、その部品を引き上げた経緯があって生まれたのだという。物がないことが当たり前だった時代、アップサイクルは言葉こそ新しくとも、以前から自然に行われていたとも言える。

物入れなどのためにストックしているカゴ

次はウッドデッキを作りたい

今は、テーブルの数に対してイスが少しだけ足りない。しばらくはイスになりそうな材料が見つかれば作っていきたいと話す古村さん。

BBQのときに食材などを置くためのローテーブル。奥さんのオーダーで作ったという。

その次は、ウッドデッキ。流れ着くパレットだけではさすがに数が足りなさそうだが、ちょうどお父さんが牛小屋をバラそうとしているため、取っておくようお願いしてあるそうだ。

最近では島内から「家具を見せてほしい」という声もある。適した漂着ゴミを拾えるタイミングもあるため、さすがにいつでもアップサイクル自体を体験させられる訳ではないが、興味を持たれることはうれしいという。この古村さんの動きから、また新たな「アップサイクリスト」が生まれるかもしれない。

古村さんがビーチクリーンをする浜から朝日を臨む

古村さんが代表を務めるOldie Village
「確かな未来は懐かしき過去にある」を基本理念に観光ガイドや各種コーディネート等を手がけていらっしゃいます。
HP:https://www.oldie-village.com/

ネルソン水嶋

1984年大阪出身、母の故郷は沖永良部島・国頭のえらぶ二世。2020年夏に移住、ライターやYouTuberとして島暮らしの様子を発信。「地域づくりと多文化共生」というテーマでTシャツ制作など事業展開中、詳細は本人まで。

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