しまのま
生活と文化とわたし

突然ですが、みなさんはコーヒーをどんな時に飲みますか?どんな時に「あ〜美味しい!」と感じますか?

眠気覚ましに、仕事や勉強のお供に、おやつタイムに。ガツンとパンチの効いた気合いのコーヒー、やさしくマイルドなリラックスコーヒー、コーヒーと言ってもその飲まれ方、楽しみ方は様々ですね。

私自身が思うコーヒーの醍醐味、それは『誰とどんな雰囲気で飲むか』。コーヒーは嗜好品だからこそ、最高のロケーション、シチュエーションで至極の一杯を味わいたいものです。そこで、前回のマニアックな珈琲体験の話に続き、今回は自然豊かな島での記憶に残る珈琲体験の話をしたいと思います。それも実際にコーヒーの木が栽培されている徳之島でしかできない、そんな贅沢体験を。

四角い箱から丸い外の世界へ

こんな話を聞いたことがあります。人間が作ったものは□(四角)。家もスマホもパソコンも。スマホもパソコンも閉じて家を飛び出せば、自然界には無限の○(丸)がある。風景のどこを切り取ってもまっすぐな直線などないのではないでしょうか。四角の外は丸い地球なのだ、と。

私自身、都会に住んでいた頃は気づかないうちに造られた四角い箱の中で多くの時間を過ごしていました。そんなせわしなく時が進む日常に飲むコーヒーは、本当の意味で美味しさを味わうものではありませんでした。

それが徳之島に来てからは、多くの時間を自然の中で過ごすようになりました。コーヒーを飲むときに見える世界もかつての冷たい壁ではありません。果てしない大空を眺め、木々に囲まれ、波の音や山の虫や鳥の声を聞きながら、自然の中でしっかり味わってコーヒーを飲むようになりました。

1人でぐびっとエナジーチャージであった飲み物。今では仲間と一緒に過ごす穏やかでゆっくりとした時間の中で『今、この瞬間を味わう』飲み物となり、コーヒーのおいしさ、楽しみ方を知るようになりました。

丸い地球を愉しむ珈琲体験

徳之島は山もあって海に囲まれ、たくさんの自然が残されています。私自身、島に移住してから多くの〈自然×珈琲〉を堪能してきました。そのいくつかのスペシャルな体験をご紹介したいと思います。

「日の出珈琲」

場所はサンゴ礁の白い砂浜が2㎞に渡って続く喜念浜。太平洋に面し、海から昇ってくる美しい朝日を拝みながら飲むコーヒー。早起きをしてフレッシュな1日の始まりに、目覚めの一杯が五臓六腑に沁み渡ります。早朝には闘牛の牛が砂浜を散歩しにやってくる姿を見ることができるのも徳之島ならでは。

「月の出珈琲」

みなさん、月の出って知っていますか?ビルや建物に囲まれた地域に住んでいると気付いたときには空にすでに月があって、月が出てくる瞬間を見るという発想がない人も多いのではないでしょうか。初めて月の出を見た時、日の出と同じくらい神秘的で美しい瞬間を目の当たりにして感動しました。波の音を聞きながら1日の終わりをかみしめる黄昏コーヒーは最高です。

「滝コーヒー」

とってもアドベンチャラスな体験。ウトゥムジの滝までの道中は時に危険な箇所もあります。世の中には人の手が加わり整備された観光地が多い一方、徳之島は比較的ありのままの状態で、どこへ行こうにも自己責任というスポットが多いように感じます。自分の五感を研ぎ澄まし、自然を荒らさず自然の中で生きる、そんな感覚を取り戻しながら辿り着いた先で飲む滝コーヒー。滝修行をしてひと休み。とても贅沢なひとときです。

都会には喫茶店もコーヒースタンドもたくさんあって、どのお店に行っても味はとてもおいしいコーヒーが飲める時代。その先の究極+αは『誰とどんな雰囲気で』を大切にするところに美味しさの価値があるのではないかと感じるのです。四角い箱物の世界を飛び出して、丸い地球を感じながら記憶に残る一杯をコーヒーアイランド徳之島でぜひ愉しんでみませんか?

珈琲体験の新しいカタチ

モノを持つ物質重視の時代から、目に見えないものに価値を見出す時代へ。不動産から可動産の時代へ。時代は刻一刻とうつり変わり、サービスのカタチも変わっていく。

現在私は、徳之島の伊仙町でコーヒー産業を盛り上げるべく新たな取り組みをおこなっています。その一つが、手作りのキッチンカー製作。

まずは宮出珈琲園の宮出さんの一台目の制作。私もイチからたずさわらせてもらい作り方を学びました。宮出珈琲園では独自の発酵技術を取り入れたコーヒー豆や葉、果皮もお茶にしています。宮出さんの淹れるコーヒーを各地で飲める日も近いことでしょう・・!

一台目で製作技術を学びDIYにはまってしまった私自身も今度は自分も作ってみたいと燃え、二台目の製作を始めました。島に滞在している大学生など色んな仲間たちが手伝ってくれ一緒に楽しく作業しています。販売予定の商品は宮出珈琲園の「コーヒーの木まるごとシリーズ」のお茶をさらに発展させた、未だ世界にどこにも存在していない新たな飲み物。

自然豊かな場所、いろんな場所でいろんな人と巡り合える、そんな夢がいっぱい詰まったキッチンカープロジェクトが今まさに進行中です。完成したら夢や希望を乗せた徳之島産コーヒーを多くの人へ届けたいと思います。いつの日かこれを読んでいるあなたにもお届けできる日が来るのを楽しみにしています!またぜひ飲みに来てくださいね〜

矢野夢子

2020年7月コーヒー修行をしに初めて徳之島を訪れて以来、素敵な海や山、美味しいフルーツ、あたたかい島の人たちに魅了され徳之島が大好きに。2021年4月から伊仙町の地域おこし協力隊して活動しており、現在は島の特産品を使った商品開発などに携わっている。

執筆記事一覧