しまのま
生活と文化とわたし

突然ですが、『闘牛』とはどんなものかご存知でしょうか?
書いて字の如く、『牛が闘う』と連想される方も多いのではないかと思います。
そう、まさに、書いて字の如く、闘う牛。
でも、それだけではなくて。
また、スペインの闘牛と混同されることも多いですが、それとは明確に違い、牛対人ではなく、牛対牛で闘うのが徳之島の闘牛です。
英語では『Bull SUMOU (牛の相撲)』と表記されます。『Bull FIGHT』でないところがミソですね。

徳之島の闘牛

徳之島の闘牛

闘牛の歴史

闘牛とはなんたるかをお話する前に、まず、闘牛の歴史から皆さんに紹介させていただきますね。
闘牛は徳之島の伝統文化のひとつで、その歴史は400年以上と言われています。(すごいですよね、江戸時代から続く文化ですって!)
もともと雄牛には本能的に縄張り意識があろようで、農耕の為に飼っていた牛が闘う様子を見たことから自然発生したのではないかとする説と、その習性を利用して牛と牛を闘わせたことが闘牛の始まりではないかとする説もあります。

そんな闘牛が行われ始めたとされる頃はちょうど、約400年前のサトウキビ生産が厳しく統制されていた、砂糖地獄に島民が苦しんだ時代で、その当時の農閑期(農業の仕事がおちつく時期)の唯一の娯楽だったとも言われています。
それから徐々に農耕の牛としてではなく、闘牛を飼育することに情熱がかけられ、現在の『闘牛文化』が形成されていったようです。

闘牛っていつも試合をしているの?

徳之島に移住してから、知人によく「徳之島って闘牛が有名でしょ?いつも試合してるの??」と、聞かれるようになりました。
正解は“いつも”ではありません。年に3回、初場所(1月)・春場所(5月)・秋場所(10月)に開催され、他には全島大会やお盆で牛主同士が出資して闘牛大会が行われることもあります。他には稽古試合といい、決着なしの試合が行われることもあります。大会はもちろん、決着なしの稽古試合ですら、やはり、そのぶつかり合う様は大迫力です。

闘牛大会の様子

先ほど、試合について触れたので、今度はその様子について。
大会では、牛主(勢子)さんが牛に声をかけ、足で合図を出しながら闘います。徳之島の闘牛は、試合が始まると引いていた手綱を解き、牛は勢子さんのその声を聞き、ツノや体をぶつけ懸命に闘います。勝負の決着はどちらかが相手に背中を見せた(戦意喪失した)時点で負けとなります。

相手に背を向けたら負け

相手に背を向けたら負け

どちらも鍛えられた筋肉で、その1トンの筋肉同士がぶつかり合う様は、その音が会場内に響くほどの大迫力です。いい勝負になってきた時や、決着が決まった瞬間に会場内は「わーーーーっ」という歓声とともに、どこからともなく太鼓や笛の音が聞こえ始め、大人も子どもも、男性も女性も「わいどーわいどー」と言う掛け声とともに、勝ち牛のいるリング内になだれこみ、ものすっごい熱気に包み込まれます。

試合決着後の様子

試合決着後の様子

大会以外の日はなにをしている?

さて、闘牛はいつもいつも試合をしているわけではないと紹介しましたが、今度気になってくるのは、それ以外の日は何をしているのか、というところでしょうか。
実は…プロサッカーや、野球と同じように闘牛にもオフシーズンがあります。ヒトと同じく、休息も必要なのです。とはいえ、それこそプロサッカーなどと同じく、日々の鍛錬は欠かせません。次は、そんな闘牛の“日常”にお邪魔してきたお話をしますね。

闘牛の普段の様子

闘牛は牛主(オーナー)に大切に育てられます。その生活は牛が中心と言っても過言ではないほどに。中心、といっても徳之島では、闘牛を仕事にしている人はいません。牛主は、別の仕事を持っていて、闘牛は犬や猫を飼うような感覚で、大切なペット、、、そうですね、家族の一員として飼われています。朝、仕事に出る前にご飯をあげたり、掃除をしたり。そして、仕事から帰ってくると、牛のトレーニング、牛の体のケア、牛小屋の掃除、餌やり…。仕事でどんなに疲れていても、生き物相手なのでサボる訳にはいきません。

そのトレーニングの内容は、主にお散歩と、お散歩の道中にあるトレーニンググッズでのトレーニングか、牛舎内にあるトレーニング器具でのトレーニングです。お散歩は砂浜(島らしいですね)、もしくは道路(牛がお散歩してるときは、車の方がよけるんです。テレビで見たことがある方もいらっしゃるのではないでしょうか?)です。
砂浜はイメージしていただけるとわかりやすいかと思いますが、人が普通に歩くだけでもかなり歩きづらいですよね?牛のあの巨体ともなれば尚更足腰が鍛えられそうですよね。

砂浜お散歩の様子

砂浜お散歩の様子

道路沿いがお散歩コースの牛さんにはタイミングがあえば、会うことができます。ただし、無断撮影はNG。どうやら人の目が気になる牛さんもいたり、その行為自体が牛さんを刺激することにつながるためのよう。撮影をしたいときは、牛主さんに確認をとって、牛さんの状態をみてもらってからにしましょう。

お散歩中、牛さんより前を歩いていると、「このこは前を歩かれることを嫌うから、横に並ぶか少し後ろを歩いてあげてね」と。牛のタイプにもよるそうですが、引っ張っていかないと歩かない子や、自分からずんずん歩いていく性格の子もいます。大きさは違えど、その様はまるで子犬のよう。

今回お邪魔させていただいた牛舎の近くには別の牛小屋があり、手綱を引いていた牛がものすっごくルンルンでその牛舎に近寄って行ったかと思うと、なんとその牛舎にいた雌牛に、ご挨拶をしにいったようで…しばらくそこから動かなくなってしまい、「もうね、よくあるのよ、これ」と牛主さんが笑いながら手綱を引く手を代わってくださり、闘牛をぐいぐいっと引っ張っていかれる姿がとても印象的でした。

簡単そうに見えて実は難しい手綱引き

簡単そうに見えて実は難しい手綱引き

お散歩の道中や、敷地内に設置してあるトレーニンググッズは、大型トラック等についている大きなタイヤがあったり、土の山があったりします。
タイヤはツノで突いてもちあげ、ツノの使い方や、首周りを鍛えるのだそう。土の山は何に使うのかと言うと、雄牛はツノを土で磨く習性があり、土の研磨作用でツノを尖らせ、他の雄牛と遭遇した際に闘えるよう準備しているのだとか(あ、野生の話です!)。

角をみがいて泥んこになる牛

角をみがいて泥んこになる牛

牛小屋に帰ってくると今度は鼻に繋いでいるロープを、少し見上げる高さにあるロープに繋がれます。
これは鼻を吊り、首をずっとあげておくことによって、首周りを鍛えているようです。
確かに首周りはほんっとうに太くて、普通の牛(乳牛)等と比べると見た目の幅だけでも2倍は違うのではないかと思うほどです。
鼻をロープで吊るのが痛そうに見えたりするのですが、牛にとっては痛くはないそう。その状態のまま、ブラッシングをしたりしますが、これまた牛さんが気持ちよさそうな表情をみせてくれます。「今からブラッシングするからね〜」「気持ちいいかな〜?」など、声をかけながらすると、牛さんの方も歩みる感じで、「気持ちいいよ〜」という表情や、「もっとここ掻いて〜」といった仕草をみせてくれます。
その姿は闘牛というよりは、もはや小さな子どもを相手にしているような気持ちになります。実際は自分よりもとっても大きい生き物ですが、その表情や仕草に癒されます。

どうですか、この表情!

どうですか、この表情!

その間に、牛舎の清掃や、餌の準備を行います。時期にもよりますが、サトウキビの上の葉っぱの部分を食べさせることもあるそうで、葉っぱの上の部分から食べる牛や、根元に近い甘い部分から食べる牛もいて、それぞれの個性がまた、可愛かったり、面白かったりします。

舌を器用に使って食べます。ちなみにご飯中は触られるのを嫌がる牛さんが多いので要注意。

舌を器用に使って食べます。ちなみにご飯中は触られるのを嫌がる牛さんが多いので要注意。

百聞は一見に如かず。きっと、イメージする闘牛と全く違う闘牛がみられますし、きっとここでの体験は他では出来ない貴重なものになりますので、徳之島に訪れた際は是非、「闘牛ふれあい体験」で闘牛と関わってみてください。

『闘牛ふれあい体験』予約方法
結や-MUSUBIYA-
所在地:〒891-7115 鹿児島県大島郡徳之島町下久志421
TEL:080−3903−2704
営業時間:8:00–18:00
定休日:なし
HP:https://musubiya-tokunoshima.com

ざきみ

熊本県出身、苗字は宮崎。短大入学を機に6年半鹿児島で過ごし、縁あって2020年12月頃徳之島に移住。日々いろんな体験と発見で、島暮らしを満喫中。どこか遠くに感じる島暮らしを、もっと身近に感じてもらえたらと、SNS等で『島と遊び尽くす』様子を発信中。是非覗いてみてね!

twitterへのリンク instagramへのリンク

執筆記事一覧