しまのま
生活と文化とわたし

旅に出ると、お土産にご当地Tシャツを買ったことがある人は多いのではないだろうか。地図や方言、名産品がプリントされていて、自分で着るにも良いし、お土産にしても良い。

しかし、こういったご当地Tシャツは観光客向けに販売されていて、地元の人が着ていることはあまりない。

奄美大島には、地元の人にも観光客にも愛される奄美Tシャツを販売しているショップがある。名瀬商店街にあるセレクトショップ「TORTUGA(トルトゥーガ)」だ。

2007年9月15日にオープンしたTORTUGA。10年以上のときが経ち、店の役割は少しずつ変化してきたい。なぜお店を始めたのか。奄美Tシャツを始めたきっかけや島への想いなど、店長の久博幸(ひさしひろゆき)さんに話を伺った。

経験もコネもなく始めたアパレルショップ

久さんがTORTUGAをオープンさせたのは24歳のとき。高校までは奄美大島で育ち、卒業してからはアルバイトで生活していた。島を出て、本土でアルバイトをしたこともあった。

しばらくして奄美大島に戻ってきた。「お前も大工やってみないか?」と大工をしている親戚からの誘い。やることが決まっていたわけではないので、大工を始めてみた。

奄美大島は日本の中でも日照時間が短い地域。雨の日が続くこともよくある。当時、大工の仕事は雨の影響で休みになることがあった。ひどいときには3ヶ月連続で休みになり、さすがに生活できないと思い別の道を探した。

子どものころから服が好きだったので、どうせなら好きなことを仕事にしてみようと思い、アパレルショップを立ち上げることを決めた。もちろん店舗の経営は初めて。アパレルショップで働いた経験すらない。ゼロからのスタートだった。

ちょうどその頃、国の事業で新規事業を立ち上げる人に向けて経営について学ぶ講座が開催されていた。久さんは講座を受講し、経営のこと、マインドやホームページの運営について学んだ。同時期に起業しようと考えている仲間にも出会えた。

経営について学んでも商品がない。服を仕入れようにも仕入れ先のツテがない。アパレル業界で働いていた同級生に頼り、少しずつ仕入れ先を見つけていった。ターゲットは島の若い人。若い人が好みそうなデザインの服を中心に仕入れていった。

シンプルでカジュアルに着こなせるものを

思ったようにはいかなかった。なかなか芽が出ない日々が続く。それもそのはず。島の若い人向けに始めたが、島には若い人がいない。高校を卒業したら島を出る人がほとんどなので、ターゲットの人がそもそも少なかった。

「当時はドレッドヘアーだったんでね。大人の人にとっては入りにくいお店だったと思います。」

入りにくい、高そう、若者向け。そんなイメージが広まってしまった。ECサイトも始めてみたが、ちょうどZOZOTOWNなどネットショッピングが流行り出した頃。あまり売れなかった。

転機になったのはお店をはじめて8年目くらいのこと。ターゲットを30代から60代に変え、そのターゲットでも楽しめる定番でシンプルな服を仕入れるように意識した。新聞の広告には60代の人をモデルにした写真を掲載し、どんな世代の人でも入りやすい店を目指した。

しかし、初めについてしまったイメージを払拭するには簡単なことではなかった。「もっと高い店かと思っていた。」当時のお客様から言われた言葉だ。島は噂が広まりやすい。伝わってしまったイメージを変えるには長い時間を要した。

ちょうどその頃、奄美Tシャツの販売も始めた。それまでもオリジナルのTシャツは販売していたが、お店のロゴが入っている程度だった。もっと奄美らしさを取り入れたTシャツを作り出した。

こだわりはシンプルでカジュアルに着こなせるデザイン。方言や奄美ならではのフルーツを取り入れつつ、普段も着られるようにデザインした。もちろんデザインの経験なんてない。試行錯誤しながら作り始めた奄美Tシャツだが、今では7種類のTシャツが並ぶ。

今では地元の人でも観光客でも、リピーターとなる人が増えた。わざわざ観光で奄美大島に来るたびに寄ってくれる人もいる。観光シーズンのときにはレジに行列ができ、店の外にまで列が続くほどになってしまった。2019年にリニューアルし、売り場面積を増やした。

「振り返ってみると一瞬だったけど、あのときお店をはじめて良かったです。お客さんが気に入った商品を見つけて帰ってくれるときが一番嬉しいですね。」

コロナ禍で感じた島の結の精神

2020年は大変な年だった。新型コロナウィルスの流行。観光客がまったく来ない。まるでゴーストタウンのようだった。

今までは買ってくれた人の写真をインスタグラムに載せていたが、お客様が来なければ載せられる写真もない。飲食店と違い、国や県から補助が出るわけでもない。どうすればいいかと頭を抱えた。

商店街を歩くと、どのお店も同じような状況だった。なにかできることはないか考えた結果、商店街のお店で写真を撮り、SNSにアップするようにした。

「自分たちにとっても良かったんです。お客さん来なくて載せられる写真がなかったので。商店街のお店のこともPRできたらお互いにとって良いかなと思って始めました。」

お店の人からはPRになったと喜んでもらえた。「投稿を見てお店に来てくれた人がいたよ。」と嬉しい報告もあった。

大変な状況はみんな同じ。奄美大島に伝わる助け合いの精神、「結(ゆい)の心」を感じた。

お店の宣伝のためにYouTubeも始めた。島の人でもお店に来たことがない人はまだまだ多い。たとえネットショップが流行っても、実際に手に取って商品を見て買いたい人はきっといる。「この人から買いたい」と思ってもらうことが大事と考え、SNSでの発信にも力を入れる。

「顔を出すのは恥ずかしいんですが、出した方が見てもらえるので。短い動画ですが、一日一本あげるようにしています。」

やれることはなんでもやってみる。そんな気持ちでコロナに立ち向かった。

一人勝ちではなく島全体が盛り上がるように

「一人勝ちだと長く続かないと思います。地域ごと盛り上がってほしい。商店街や、奄美全体が盛り上がっていくように頑張りたいですね。」

最近では、売り場にアクセサリー、革製品、レディースの服、お菓子など、奄美在住のハンドメイド作家の人たちの作品が並ぶようになった。

作品を作っている人はインターネットを利用して販売していることが多い。リアルな店舗でも販売したいというニーズを聞き、売り場の一部を提供するようになった。

「うちはレディースがなかったので助かっています。観光で来られた人も、奄美の人が作っていると紹介すると興味を持ってくれます。」

また、お客様対応のときに心掛けていることがある。

「うちにない商品で、他のお店にあるときは必ずそのお店を紹介するようにしています。それはスタッフにも必ずそうするように伝えています。」

TORTUGAは商店街の入り口に位置するお店。足を止めてくれた人に別のお店を紹介すれば商店街の中に入ってくれる。誘導することも自分たちの役割だと思っている。

「助け合っていくのが島らしさですから。」

地元にも観光客にも愛されるお店TORTUGA。奄美Tシャツを買えば、きっとあなたも島んちゅの仲間入りができるだろう。

 

奄美の服屋 TORTUGA – トルトゥーガ
https://tortuga-fashion.com/
住所 鹿児島県奄美市名瀬末広町9番3号 中央会館ビル1F
☎️ 0997-58-5866
営業時間 11:00〜19:00
メール info@tortuga-amami.com
定休日 不定休
Instagram https://www.instagram.com/ttg915/
YouTube https://www.youtube.com/channel/UChdYAK3Yp60BCXO76ksvv_g

TORTUGA NAIL
http://r.goope.jp/nail
住所 鹿児島県 奄美市名瀬伊津部町20-10 円堂ハイツ1F
☎️  0997-53-4555
営業時間 10:00〜19:00
定休日 不定休
Instagram  https://www.instagram.com/nailtortuga/

クリニックサロン トルトゥーガ
住所 鹿児島県 奄美市名瀬伊津部町20-10 円堂ハイツ1F
☎️  0997-53-4555
営業時間 10:00〜19:00
定休日 不定休
Instagram  https://www.instagram.com/clinicalsalontortuga/

田中良洋

兵庫県出身。東京で6年間働くが、都会に疲れて2017年1月に奄美大島に移住。島ではWebライター、映像制作、ドローン撮影、マリンショップのスタッフ、予備校スタッフなど様々な仕事をしている。島生活のことを綴ったブログやSNS「離島ぐらし」を運営中。

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