しまのま
生活と文化とわたし

漁船から降ろされたばかりの鮮魚

美しい海に囲まれた奄美大島では、暮らしの中に豊かで新鮮な海の幸がたくさん登場します。

しかし、魚は鮮度が命。輸送技術が発達した現代ではありますが、南の離島からの配送ではどうしても時間がかかってしまいます。

島の魚の美味しさを、島で食べるようにそのままにお届けしたい。

そんな熱い思いで鮮度維持にチャレンジしている漁師さんたちが集まる漁協があります。
奄美大島北部に位置する奄美市笠利(かさり)町、赤木名(あかきな)漁港にある奄美漁業協同組合の笠利本所。魚の鮮度をキープするさまざまな先進的な取り組みが評価され、2020年12月には、(一社)大日本水産会による「優良衛生品質管理市場・漁港」の認定を受けました。奄美群島でこの認定を受けたのはこちらの漁協が初めて。

そんな鮮度抜群の海の幸は、漁協に隣接する食堂「魚匠(ぎょしょう)」でいただくことも可能。奄美に来たら食べてほしい、名物「ウンギャル丼」などをご紹介します!

鮮度抜群の美味しい魚を提供!奄美漁協の取り組み

清潔で整頓された漁協内。床には何も置かれておらず全て台の上に。魚の生臭さなどもありません!

奄美漁協笠利本所では、約20年前から魚の鮮度保持や衛生管理のためにさまざまな取り組みを積極的に行ってきました。

船上で血抜きを行った新鮮な魚を衛生環境が整った漁協内で加工し、現在は沖縄や東京、神戸などへの販路開拓にも成功しています。

鮮度維持の作業は船の上から始まっている!魚を獲ってから漁協に運ぶまでの間に傷んでしまわないよう、漁師さんたちが船の上で魚を一匹一匹活き締めし、血抜き処理までをします。

泊まり込みで漁に出る漁師さんもいるため、漁協に魚を運ぶまでに何日かかかることもあるそうです。
その間に船の上で鮮度が下がってしまうのを防ぐため、魚を沖締めした後は氷水を入れたクーラーの中で保管します。
非常に手間のかかる作業ではありますが、この大事なひと手間のおかげで、鮮度を保ったまま船の上で管理できるだけでなく、魚の生臭さも消えて美味しい奄美の海の幸を提供することができる、と柊田(ふきだ)組合長が教えてくれました。

足場の不安定な船の上での作業となると、難しいこともあるのでは?と思い、実際に活き締めをしている漁師さんにもお話を伺いました。
「最初はなかなかうまくできなくて、難しいなと思いながらやっていたけど、やっているうちに慣れてきて。魚を美味しいまま水揚げできるから、知り合いに分けると他より味がいいって言われることも多いよ。そう言われると嬉しいし、食べてくれる人みんなが美味しいと思ってくれたらいいなと思って毎日やってるよ。」

なるほど、漁師さん1人1人の思いや愛情があるからこそ、この漁協で水揚げされる魚のおいしさが保たれているんですね。

また、もうひとつの秘訣は「ウルトラファインバブル」の導入です。
「ウルトラファインバブル」とは、直径ナノサイズという非常に細かい泡のこと。
この気泡を作る装置を使って、きれいな塩水から「超低酸素ウルトラファインバブル海水」を作り、魚を漬けておきます。
細かい泡が魚をコーティングし、真空パックのような効果が得られます。これによって魚の酸化や菌の増殖が抑制され、鮮度をより長く保つことができるのです。

奄美の定番おつまみとして人気の「マガキガイ」(方言名:トビンニャ)などもこの海水を使って調理されていますよ。

漁協内の衛生管理も徹底

地面が緑色の場所を通路として区別。通路では一般の方の見学も可能。

漁協内の衛生環境もしっかりと管理されています。

魚を直接地面に置かないよう選別用の台を置き、魚や氷を入れる箱なども床に触れないようになっています。
荷さばき場の周囲は防鳥ネットで囲い、魚を狙った鳥などが入ってこない工夫が。
また、荷さばき場では専用の長靴を履くようにし、長靴を殺菌水に浸してから場内に入るよう徹底されています。

このようなたくさんの取り組みが、安心・安全な奄美鮮魚のおいしさに繋がっています。

柊田組合長は笑顔でこう締めくくってくれました。
「奄美の人はもちろん、内地のみなさんにも奄美の新鮮な魚を食べてほしい。手間のかかる作業もありますが、美味しい鮮魚を届けるための方法を組合員で話し合いながら取り組んでいます。美味しい奄美鮮魚をぜひ食べてみてね!」

鮮度抜群の海の幸を食堂「魚匠(ぎょしょう)」で!

魚匠いちおしの「ウンギャル丼定食」

漁協に隣接した「奄旨海房 魚匠(あまうまかいぼう ぎょしょう)」では、奄美の海の幸を堪能できます。

水揚げされた新鮮な魚を、漁協婦人部の奥さまたちが調理してくれます。
刺身定食やミックスフライ定食、一品料理ではトビンニャやソデイカ刺身、もずく天ぷらなど、地元の食材を使ったメニューがずらり!

いちおしのメニューは「ウンギャル丼定食(税込 1,200円)」。
ウンギャルマツとは和名で「アオダイ」のこと。奄美大島近海でよく獲れる高級魚です。美味しいウンギャルマツの切り身のほか、もずくやアオサの天ぷらがひとつの丼にを乗った、豪華な丼にパパイヤの漬け物などがついた定食です。

ウンギャル丼には魚の旨味たっぷりのスープをかけていただきます。

美味しい食べ方として、「天ぷらをサクサクで食べたいなら別で食べてもらってもいいんだけど、天ぷらにもスープかけて食べるともっと美味しくなっておすすめですよ」と教えてもらいました。

早速その通りスープをたっぷりかけていただいてみました!

魚の出汁と天ぷらの油があいまって絶妙な味わい。ウンギャルマツの身はもっちりしていて味も濃く、どこから食べても絶品の定食でした。

わたしはもずくの天ぷらが大好きなのですが、サクサクとして本当においしかったです。
「もずくの味もちゃんと出して、サクサクになるように、作り方を色々と変えてみたりして日々改良してるよ。」と教えてくれました。

食堂で働く漁協婦人部の奥さまたちのあたたかい雰囲気に包まれ、島への思いが詰まった丼をいただけば、心までぽかぽか満たされます。

漁協の婦人部では、食堂だけでなく地元の水産物を使った加工品の開発・製造や販売も行っています。

タレにしっかり漬け込んだ「もずくパパイヤ漬け」や、ソデイカや奄美の粒みそを使った「イカ味噌」など、地元、笠利の食材を使用しているというだけでなく、添加物が使われていないのも嬉しいポイント!
おいしい笠利の味覚を持ち帰って堪能してみてくださいね。

 

奄旨海房 魚匠
住所:鹿児島県奄美市笠利町外金久988-1(奄美漁業協同組合内)
営業日・時間:毎週火、木、土曜日 11:00から14:00まで(不定休があるため、要確認)
電話:0997-58-8400

藤原 志帆

大阪出身、26歳で奄美大島へIターン。大学在学中はチリ、スペイン、アメリカに留学し、中南米の6カ国28都市をバックパッカーとして周遊。その後新卒で不動産広告のITベンチャー企業に就職し、トップセールスを獲得する。美しい海に憧れて奄美大島に移住してからは、フリーライター、アフリカンダンサー、ブロガー、通訳士(スペイン語・英語)、予備校、島料理屋など多方面で活動。地酒の黒糖焼酎が大のお気に入り。 奄美大島観光・生活情報ブログ「奄美大島に行こう」を運営。

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