しまのま
生活と文化とわたし

からっぽの空に、透き通ったエメラルドグリーンの海。足元にはオシャレな貝殻を背負ったヤドカリ達が今日もファッションショーを見せてくれます。
ここは隆起珊瑚が美しい「うじじ浜」。
沖永良部島で一二を争うほど日の出の風景が美しく大人気の観光スポットです。

私はこの春から沖永良部島の知名町にある中学校に通っている、竿 りりと言います。小学3年生の夏休みの宿題をきっかけに、家族で4年間毎日のように浜辺へ出かけ、ゴミ拾いをしています。

「どうしてかって?」

4年前のうじじ浜は、漂着ゴミで厚く埋め尽くされていて、ヤドカリ達はボロボロになった容器の蓋を背負っていたからです。

今、世界では年間3億5900万トンものプラスチックがつくられ、そのうちの800万トン以上のプラスチックゴミが海に流れ出し、日本からも2~4万トンも流れ出しています。これらのプラスチックゴミをエサと間違えて食べ、沢山の生き物達が命を落としているのです。実際に私達の住む沖永良部島でもプラスチックを食べて死んでしまった海亀が発見されるほど、私達子どもにとっても、深刻で身近な問題となっています。

浜辺のゴミをよく観察すると、日本語のゴミは少なく、見たことの無い文字のゴミがほとんどだなと気付きました。不思議に思い、ゴミについているバーコードを調べ整理しました。研究の結果、「黒潮」に乗ってアジアの様々な国からこの島に流れ着いていることや、季節によって海流が変わると流れ着く浜の場所も移り変わっていることも判りました。

今ではゴミ拾いをしてくれる人も増え、ペットボトルなど、大きな目立つゴミは4年前よりは少なくなってきています。今私達は、波や紫外線で小さくなったプラスチックをひと粒ひと粒ピンセットで拾うようにもしています。5mm以下のものはマイクロプラスチックと呼ばれ、有害物質を高濃度で吸着する性質から、生物や人体の健康にとても悪い影響を与えるため、世界中で大問題になっていますが、よい解決策は見つかっていません。

マイクロプラスチック汚染を多くの人に知って貰うため、集めたマイクロプラスチックを瓶に詰め、実際に手に取り、直近で見えるようにしました。ボランティアで行っている環境問題の勉強会や、ビーチクリーンエデュケーションツアーなどの場でマイクロプラスチックを紹介するためです。とても評判が良かったので、「海の豊かさを守るマイクロプラスチックキット」として、教材や店舗ディスプレイ用に販売を開始しました。TVや新聞、WEBニュースなど、様々なメディアにも取り上げて貰いました。私が住む町の小学校と島で唯一の高校にも教材として導入が決まりました。マイクロプラスチックキットの売り上げは、うじじきれい団の活動資金に当てたいと思っています。

ゴミ拾いを始めた頃は、ゴミ処理費用やゴミ袋やトングなどの道具代などは、私たちの「おこづかい」から捻出していましたが、今では町が負担してくれています。漂着ゴミ専用のゴミ箱設置や回収作業なども協力してもらっています。お小遣いが減らないのでとても嬉しいです。

活動を続けているうちに、「地球環境問題」や2030年までに達成しなければならない「SDGs」の事も知りました。プラスチックを1kg製造する時に排出される二酸化炭素は約1.9kgで、地球温暖化の大きな原因の一つであることも学びました。
漂着ゴミのほとんどがプラスチック製のゴミで、私達人間の暮らしから出たゴミでした。一人一人が環境に負担のかからない暮らし方を考え実践しなければ、住みよい地球を保つ事ができなくなっています。

去年の夏休みは、拾い集めた青やオレンジ色のブイ(浮き、漁具)を活用して、漁港の壁に「翼のウォールアート」を制作しました。ブイをコンクリートの壁にボンドで固定し、翼に見立てました。写真映えするスポットです。楽しみながら海のゴミに興味や関心を持って貰う事が目的ですが、ゴミによって危険にさらされている動植物が沢山いることを知り、行動に移すキッカケにして欲しいと思っています。沖永良部島へご旅行の際にはぜひこのウォールアートを探していただき、写真を撮って貰えると嬉しいです。

私達の目標はゴミを無くす事ではありません。動植物などの小さな命を守るためにこのゴミ拾い活動を続けています。自然が失われてしまったら、地球はバランスを崩し、人は生きてはいけません。

「誰1人取り残さない」

人間中心の考え方には、私は違和感を感じます。
皆さんはどう感じますか?


~父、竿 智之よりうじじきれい団について~

私達家族が住む沖永良部島は、奄美群島の南西部に位置する風光明媚な島――

……のように見えるのは観光用のポスターの中だけで、実際には隣国から流れ込む、大量の漂着物(外国製の漁具や品)で浜辺は埋め尽くされているのが日常の風景。

長女の夏休みの作文のテーマ「環境問題」を考えるために始めた漂着物を拾うビーチクリーン活動。名前は、うじじ浜をきれいにするから「うじじきれい団」。活動内容などは全て子供達主導の「ニコニコ会議」で決めて行っている。親は基本的に口出ししない。親として特に気をつけている事は、「大人の常識や価値観を教えない、押し付けない」ことだけ。

活動を続ける事4年。小さな島の小さな浜辺で始めた活動は、島内外の大人たちを巻き込みながら、黒潮のような大きな潮流となった。子供たちを近くで見守り続けてわかった事がある。それは、地域の課題を見つけ自分達の知恵やお小遣いだけで楽しみながら地域課題を解決に導く様は、大人より立派な社会人だという事。兎角、社会は大人の都合だけで作られがちであるが、子供たちの都合で創る社会の方がより豊かで楽しくなりそうだ。そんな沖永良部島の未来を想像するだけで、わくわくしてにんまりしてしまう。

うじじきれい団

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