しまのま
生活と文化とわたし

みなさまこんにちは。昨年の12月、えぇとても中途半端な時期に徳之島移住をきめました、ざきみと申します。元々は鹿児島で建築の仕事をしておりましたが、徳之島に住む彼から「徳之島にきてくれない?島で一緒に暮らしてみない?」との言葉で移住を決意(本当は、マリンアクティビティが楽しめる真夏の8月に移住予定でした)。島に移住してからは、サトウキビやジャガイモ収穫などの農作業のお手伝い、集落や海をお散歩したりして、島と遊び尽くそうという思いで暮らしています。気づけば移住して早半年。そんな中、私目線で見えてきた、徳之島の海と人との関わりについてお話します。

海がきっかけ

「ちょっと海行ってみらん?」彼がそう言うときは、だいたいのときは、”ちょっと”なんてものじゃない。銛(もり-魚を突き刺す二股?四股の槍が先についている棒)か、一本竿(釣り竿)をもって出かける。磯用の靴をはいて。

てくてくてくてく…
家から海へ3分程の道のりを歩いていく途中、「今から行くの?急に深くなるところがあるから気をつけてねー!」と、私たちの住む集落の区長さんが自宅の窓から声をかけてくれる。格好が格好だからだろう、海に入る前提の話にこちらのやる気が見えてしまっているのではないかと、ちょっとだけ恥ずかしくなる。少しお話した後、「はーい!ありがとうございますーーー!」と元気な返事をしてまた、てくてくてくてく。歩きながら、彼と話す。「こうやって声かけてもらえると嬉しいね」「なんかこういうの、いいよね」。海をきっかけに生まれたコミュニケーションに、なんだか温かい気持ちになった。

蛸の話

海に着くと、風が無く水面が静かで、月明かりに照らされた薄明るい海が広がっていた。今日は絶好の蛸(たこ)取り日和。うん、蛸がよく見えそう。

磯の上を、蛸を探しながら歩く。海の中は少し冷たいから、少々歩きにくくても磯の上の方が私は好きだ。でもやっぱり、浅瀬までいく方が見つけやすいらしい。
「いた!!!!(バシャッ)」そんな声と共に、銛に脚を絡めて真っ赤に変色した蛸の姿が目に入る。ここら一帯で取れる蛸は、シガリという足の長ーい蛸。本当に、羨ましいほど長い。取った蛸は、たんかんが入っていた赤色のアミアミのネットの中に入れる。前回、コンビニ袋で持ち帰ろうとしたところ、袋を噛みちぎられて穴が空いてしまったので、今回は「コンビニ袋か!そりゃー弱い!たんかんが入ってたネットがあるでしょ?あれなんか使うといいよ!」と島のおじちゃんオススメのネットを使ってみた、という訳だ。

ただ、蛸も必死。なかなか体力が落ちず、ネットに入れるのがまぁ大変。蛸の脚が手にまとわりつき、なんとも形容しがたい気持ちになる。端的に言うと、ちょっと気持ち悪い。(ちなみに私は、銛で突くのは出来てもネットには入れられない。その作業はただ見てるだけ。それでも気持ち悪いのだから、彼は本当にすごいと思う。)でも、双方必死なのだ。もう1回〆てみたらどうかと一度地面におろし、再度銛を刺す。すると、いい所に入ったのか、今度はみるみる白っぽく変色していく。そこでやっと、ネットに入れることが出来た。

彼が蛸をネットに入れてるところ

その後も、小さいのから中くらいのものまで3匹程捕まえ、少しノってきた頃、これも蛸か?と思い刺したそれは、、、(ズボッ!)…モコモコモコ…え?!何これ!!!刺した後の感触が蛸のそれとは全く異なるもので、手にとても違和感があった。何か良からぬものを刺してしまったと思った私は慌てて銛からそれを抜き、よく見てみると、なんとハリセンボンだった。ハリセンボンは、ぱんぱんに丸くなって、海面でヒレをピロピロさせながら上手く泳げなさそうにしていた。彼が、「あーぁ可哀想に!暫くぱんぱんにふくらんだまんまだよ」と言っていた。可哀想なことをしてしまったとは思ったが海面の上から見ていると、なんせ蛸に似ていたんだから仕方ない。

もそもそ動いているときが蛸に似てる!

幸せな時間

さて。取ってきたその蛸は、下処理をしてその日のBBQの具材として迎えた。「自分で取ってきたってだけで達成感あるし、それで幸福感あがるし美味しく感じるね」「この時間を幸せって思うね」なんて話をしながら。

本当においしかった

冷凍保存がオススメ!!

後日、集落で開催するイベントのミーティングがあり、「この前蛸取りに行ってたんだって?」と、はす向かいに住むおじちゃんが声をかけてくれた。「そうなんです~大きい蛸もとれました!」と話すと、「昔はもっとたくさんの人がわざわざ下久志に来て、蛸取りしてたんだけどねぇ」なんてお話を聞いたりして。そうこうしているうちに、「蛸は、冷凍保存するといいんだよ!」とか「塩で揉んだら、ぬめりがとれるからね!」と、横で聞いていた方々が教えてくれたり。海の話題は、いろんな方から声をかけていただけるきっかけになる。島の方の中には、魚よりも蛸がすき!という人もいて、「取れたら持ってきてよ!」なんて冗談まじりにお話してくれる。だけれど、きっと蛸に限らず、海の幸のおすそ分けが喜ばれるのは本当のことで。集落の方の中には、いつでもおすそ分けできるように蛸や貝を冷凍保存している方も多いと聞く。今度取れたら、私もそうしよう。

こんな感じにパッキングする

海が繋ぐ島人

蛸が取れるその海のまわりには防波堤があって、すぐそばにはもう民家が立ち並んでいる。蛸取りだけでなくて、お散歩やウミガメの産卵に立ち会うためだったり、夜は星や月をみるためにその海に訪れる人も多い。目的は違えど、何故か海に引き寄せられるように。
私にはどうも島の海が、私(移住者)や島人同士を繋げてくれているように感じられてならない。島に訪れられた時は、是非、海に立ちよってみて欲しい。

ざきみ

熊本県出身、苗字は宮崎。短大入学を機に6年半鹿児島で過ごし、縁あって2020年12月頃徳之島に移住。日々いろんな体験と発見で、島暮らしを満喫中。どこか遠くに感じる島暮らしを、もっと身近に感じてもらえたらと、SNS等で『島と遊び尽くす』様子を発信中。是非覗いてみてね!

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